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リレーエッセイ Vol.1 野村浩子さん

自分の人生を自分で決めていくために、働かなくてはいけない─。
そう考え始めたのは、小学生の後半だったか、中学生の頃だったか。今となっては定かでないが、自分の人生の決定権を自らが持つには、経済的自立が欠かせない。自立とは、経済的自立のうえに成り立つものだ。学生時代からそう考えていた。おそらく専業主婦の母の姿などを見ながら、そう考えたのだろう。

そこで、就職活動をするときから、私は生涯働こうと思っていた。きれいごとではなく、仕事はまず自立して生きていくための基盤だと考えていた。この考えに、今も変わりはない。しかし年代とともに、仕事の意味が少しずつ変わってきた。

駆け出しの雑誌記者の頃は、半歩先、一歩先の流れをつかんで、それを読者に伝えていくことが面白くて仕方がなかった。学生時代よりも学びに熱心になり、海外旅行よりも海外取材のほうが楽しいと気づき、働くこと、学ぶこと、遊ぶこと、の境目が次第に曖昧になっていった。「働く」「学ぶ」「遊ぶ」の三つの円の重なりが大きくなっていった。

副編集長、編集長と責任が増していくと今度は、仕事の「社会貢献性」といったものを意識するようになる。『日経ウーマン』という女性誌に異動したことも大きかっただろう。働く女性たちをどう応援するか、揺れる気持ちを受けとめつつ、それぞれが前に進むためにどんなサポートができるのか。編集部のみなで真摯に議論して企画を立て、記事を世に送り出す。それが読者の心に届いて、「励まされた」「進む方向が見えてきた」「今の自分でいいんだと、ほっとした」、こんな声が聞こえてくると、この上もなく嬉しい。

女性のみならず男性も、自分にとって幸せだと思えるような働き方がみつかるといい。そのためのお手伝いをすることが、今の私にとっての社会的使命だと考えている。

仕事にまつわる10問アンケート

  1. 今の仕事が好きですか?

    好きです、たいへん。

  2. 一生困らないほどのお金が手に入ったら、仕事以外にやりたいことは?

    ・宇宙旅行。 
    ・「夢基金」をつくって、社会を変革するような素晴らしい事業プランを持っている人に投資する。

  3. 仕事で、“鳥肌が立つほど感動した”ことがありますか?
    それはどんなときですか?

    有名無名にかかわらず、志をもって必死に何かをつかもうとしている姿に心を打たれる。最近では、日経ウーマンが主催する「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」の入賞者になるのが目標だという20代女性に出会ったときのこと。手帳に過去の受賞者一覧表を貼っていて、そこに自分がランクインしている姿をイメージして、日々過ごしているという話を聞いたときでしょうか。

  4. 仕事より大切なものは?

    愛、健康

  5. 子供の頃になりたかった職業は?

    学校の先生、考古学者、プロダクトデザイナー、ジャーナリスト…など。

  6. あなたの子供に、仕事のためにどのようなことを身につけさせたいですか?
    (※子供をお持ちでない方は、いると仮定してお答え願います)

    自分の頭で考え、行動するための「クールヘッド」と「ウオームハート」(論理構築力と情熱)。

  7. あなたの仕事にとってコンピュータとは?

    仕事に欠かせないツール。

  8. 今、「ワード」と「エクセル」がこの世から消えたら?

    ほかのソフトを使う。

  9. 仕事で成功するために、もっとも大切なことは?

    自分にとっての「成功」とは、何かを自己分析すること。柔らかな心をもって変化を恐れず、何にでも挑戦してみること。これだというものを見つけたら、トコトンやってみること。

  10. 最近読んだ本で、仕事に役立ったのは?

    『希望格差社会』[山田昌弘/筑摩書房]

『日経 WOMAN』編集長 野村浩子(のむら・ひろこ)

【Profile】

1962年大阪府生まれ。84年お茶の水女子大学文教育学部卒業。就職情報会社ユー・ピー・ユーを経て、89年日経ホーム出版社に入社。ビジネスマン向け月刊誌「日経アントロポス」の創刊に加わる。95年「日経ウーマン」編集部に異動し、その後に副編集長となる。2003年より現職。

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