No.137
株式会社 シゴトヒト
代表取締役
ナカムラ ケンタさん
中学生のとき、将来何になりたいかを考えるための合宿がありました。その際に、転勤族の家庭で育った自分のなかに、かねてからあった「自分の居場所を作りたい」気持ちと、「人が集う場所をゼロから作りたい」という想いを束ねて、建築家を目指そうと決めました。
しかし、現実には建築家はゼロから作る仕事というより、“請け負う仕事”。自分のしたいこととはズレていたので、いろいろな人に相談した末、やりたいことに近い不動産会社に就職しました。その会社では、「すべての仕事をやってみたい」と申告した通り、半年ごとに部署異動してあらゆる仕事をさせてもらいました。良い経験になりましたし、充実もしていましたが、どこか自分のなかに漠然としたモヤモヤ感があり、週に5日はバーに通っていました。
これほどまでに、なぜ自分はバーに通うのかを考えるなかで、それはお酒が飲みたいわけでも、おしゃれな内装だからでもなく、そこにいる人が魅力的だからだと気づきました。いきいきと輝く人が集まっている場は、魅力的な場になる。魅力的な場には、さらに魅力ある面白い人たちが集まってくる。といった好循環が生まれる。それこそが、まさに自分がやりたい「場作り」だと思い至りました。“人”こそが、魅力的な場作りの要なので、人と人をつなげて居心地の良い職場を増やしていく「求人」を仕事にしよう!とひらめいたのが、現在の『日本仕事百貨』をはじめたきっかけです。
『日本仕事百貨』は、常時20件程度の求人を掲載しています。エリアは全国にわたり、求人掲載の経路は口コミが多く営業は行っていません。そして、求人記事を書くときに一番気を使っているのは、求職者の必要としている情報をきちんと載せること。大変なことも含めてすべて正直に書くことで、双方にとって良い結果になるからです。
また、以前に虎ノ門で運営していた『リトルトーキョー』(※)も、清澄白河で新たにスタートしました。そこでは、多種多様な人に、ふらっと立ち寄ってもらえて、会話を楽しんでもらえる「しごとバー」も再開。さらに今後は、「誰もが映画館を作れる」という企画を具体化するための別会社も設立予定です。こうしたさまざまな試みを通じて、魅力ある人たちがつながり、その輪が広がっていくことを日々実感しています。それはまるで植物が育って、根が絡み合いながら、さらに伸びていくような感覚で、サラリーマン時代には感じられなかったこと。以前のモヤモヤ感は、起業とともに消えていきました。
自分にとって働くことは、自由になること。昔、パイロットが青空を飛ぶのを見て、その自由さに憧れたように、自分の意思を航路に、責任の伴う自由さとともに、自分の在りたい場を作り続けていきたいと思っています。
※いろいろな生き方や人に出会える“場作り”プロジェクト。
株式会社 シゴトヒト
代表取締役
ナカムラ ケンタさん
1979年東京都生まれ。株式会社シゴトヒト代表。
明治大学 大学院 理工学研究科建築学専攻を卒業後、不動産会社に就職。不良債権処理、大型複合商業施設の開発・運営などを経験後、2007年28歳のときに退職。2008年8月、生きるように働く人のための求人サイト「東京仕事百貨」(現「日本仕事百貨」)を立上げ、「自分ごと」「隣人を大切にする」「贈り物」な仕事を、全国各地に出向いて取材して紹介している。シブヤ大学しごと課ディレクター、シゴトヒト文庫ディレクター、グッドデザイン賞審査員などを務め、東京の真ん中に小さなまちをつくるプロジェクト「リトルトーキョー」や「しごとバー」の企画・デザインを監修。
【2016年4月インタビュー】
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