私はありがたいことに、航空機、自動車、自転車と、技術者として好きなことをいつも仕事にしてきました。学校を出て、日本航空機製造(国産旅客機YS-11製造メーカー)に入社しましたが、2年後にYS-11が生産中止となり、当時のトヨタ自動車工業株式会社に移りました。トヨタ自動車時代も、よき社風と良い上司に恵まれて思う存分、クルマ開発の仕事をしてきました。
「自転車を作りたい」と思ったのは、小学生の頃から乗り物に興味があったのと、なかでも自転車を、“孫悟空のきんと雲”にできたらと、思っていたからです。
前々から、“自転車はどうあるべきか”ということを自分なりに考えていて、7年ほど前にトヨタの社内ベンチャー制度に応募して自転車開発製造の会社を作りましたが、経営がうまくいかず2004年11月に解散。しかしその後も、「軽くて使い勝手の良い、折りたたみ自転車」というテーマを、ずっとあたため続けていました。そこで、トヨタを辞めた半年後の2005年1月に、現在の有限会社バイク技術研究所を設立しました。
昔なら、企業が数億円かけて揃えるようなITインフラ設備が個人でも手に入り、パソコン等を活用すれば一人で数人分の仕事ができる。しかも、電子メールやSkypeのおかげで、誰とでも距離を意識することなく仕事ができるようになったことも、起業のきっかけになりました。そして、起業するなら、自分の経験が生かせる「モノづくり」で、それも自転車と決めていました。サラリーマン時代と違って、「モノづくり」起業家の醍醐味は、なんといっても、自分が考えたモノをお客さまに使ってもらって、お客さまに喜んでもらえる。もうそれに尽きます。
最近の若い人には、「単純なつらい仕事でも、自ら買ってでもやれ」と言いたいです。なぜならば、その経験が将来、必ず役立ってくるからです。仕事で大いに苦労して、人脈を広げて、経験を積みなさいと。そういう積み重ねがあれば、将来独立して自分のやりたい仕事ができるようになります。昔と違って、経験や人脈およびチャレンジ精神があれば、大企業でしかやれなかった仕事が個人であってもいくらでもできます。やる気のある人にとって、今はすばらしい時代です。
今の仕事(自転車の企画・設計・開発・製造・販売)に、情熱をもってやっています。
パーソナルプレーン(“孫悟空のきんと雲”)の開発です。
パテント出願中のアイデアで電動アシスト自転車を試作して、アイデア通りの成果が具現化したときです。
家族および健康です。
戦闘機のパイロットです。(視力でNGでした。)
「石の上にも3年」と言われているように、仕事には忍耐力が大事です。
忍耐力を身につけさせます。
スピードを上げて勝負できるツールです。
何事も忍耐力です。途中であきらめたらそれで終りです。
1時間では、とくにしたいことがありません。
常にチャレンジ精神をもって、毎日少しでも前進しようとする気持が大事です。
『なせば成る 偏差値38からの挑戦』
[中田宏 著/講談社]
1949年福岡県生まれ。
国産旅客機「YS-11」の製造会社、トヨタ自動車株式会社を経て、2005年7月に有限会社バイク技術研究所を設立。約30年の開発経験を生かし、超軽量化を具現化した折りたたみ自転車『YS-11シリーズ』(最軽量仕様で7.3kg)をはじめ、各種自転車部品の開発・製造・販売を行っている。2007年11月には、世界で初めて11kg代の電動アシスト自転車『YS-11ハイブリッド』も発売。
また、2008年2月、『YS-11、走る!』-たった一人で世界と闘う技術者魂 -(徳間書店)という書籍も刊行。