昨年、横浜で20年ぶりに高校の同級生が集まりました。当時の昔話になって、地下鉄3駅をまたいで鬼ごっこをしたり、校庭のトラックで原チャリのレースをやって先生にしかられたり、僕はそういういたずら企画ばかりしていたなあと話していたら、「それ、今やってる仕事に活きてるねえ」と言われて「そうかもしれないな」と思いました。確かに、今自分がやっている広告コミュニケーションの仕事とは、人を驚かせたり喜ばせたりすることを企画し、実施することで、何かを伝えたり体験してもらったりする。それでお得意先の課題を解決する仕事なのです。
自分で会社を設立したり、やったことのない領域の仕事を始めるときなど、不安な気持ちで胸がいっぱいになります。ちゃんとできるんだろうか、と。そんなときには「不安が大きいほど、乗り越えたときに得るものが大きいはずだ」と自分に言い聞かせて、自分を追い込んでダイブする。親友に指摘されてわかったのですが、この感覚は、学生のときにバックパックひとつで20カ国以上をひとり旅したときに覚えたものだ、と思い当たりました。
30歳を過ぎたころから、会社で習った仕事のスキルに加えて、自分自身の人生体験や、そこで得た社会や、人間に対するものの見方が仕事に活きることが多くなったと思います。読んだ本、見た映画、会った人、心動かされた体験、その全てが、どこかで何かの戦略やアイディアに活かされる。チームのメンバーのひとりひとりのそういうものが結集すると、人を動かす広告コミュニケーションがつむがれていく。だからこの仕事は面白いのだと思います。
そういうわけで、僕も仕事馬鹿にならないように、これからもたくさん遊び、いい体験をして、多くの人と話す。最近は、そういうことを考えています。
はい、大好きです。
バックパックを背負って、もう一度世界一周旅行をします。世界には知らないことがたくさんありますから。
先日、タイで、ある広告祭があり、1,000人以上の出席者の前で、自分で編集した2分間の作品ビデオが流れたときにゾクゾクしました。
考える力と感じる力。これがあれば何をやっても楽しめると思います。
新聞記者か発明家。
英語、楽器、絵画。日本語以外のコミュニケーション能力ですね。3つとも自分が子供のときに習ったことですが。
仕事でも仕事以外でも、何か思いついた欲求を実現するための強力なパートナー。
仕事をこなすスキル以上に、仕事を楽しくするスキルが大切だと思います。
日記帳を前に、たまったCDを大音量で聞きます。日記マニアなのです。
『疲れすぎて眠れぬ夜のために』
[内田樹 著/角川文庫]
『国家の罠~外務省のラスプーチンと呼ばれて~』
[佐藤優 著/新潮文庫]
1969年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業。
1992年博報堂入社。ストラテジックプランナーとして広告開発、商品開発、メディア開発など、職種領域を越境したプランニングを行い、2006年博報堂ケトルを設立。ケトルとは「アイディアを沸かせて世の中を沸騰させる」やかんの意味。既存の広告手法にこだわらない「手口ニュートラル」というコンセプトで得意先のコミュニケーション課題を解決するキャンペーンを提案、実施している。確信ある戦略とそこから逃げないクリエイティブがモットー。受賞暦にニューヨークフェスティバルAME(戦略)部門グランプリ、アウトドア部門ブロンズ、アジア太平洋広告祭サイバー部門ゴールド、INNOVA(革新)部門優秀賞など。2007年カンヌ国際広告祭プロモ部門審査員。