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リレーエッセイ Vol.89 水野 雄介さん:変革

私にとって仕事とは、自分にしか出せない価値を社会に産み出すこと。そしてそれが生きている意味です。

2年前に中高生のためのITキャンプ「Life is Tech!」という事業を立ち上げました。もともと私は、物理の教師をしていて中高生の自立していく成長過程が好きでした。1人の教師として生徒の成長を支えることも非常に有意義ですが、現行の前倣えの教育制度に高校時代から疑問を感じており、日本の教育の仕組みをもっと根本から変える必要があるという想いが強くなりました。時代の境目には、教育も大きく変わります。19世紀に吉田松陰が松下村塾での教えを通して明治維新を後押ししたように、20世紀には福沢諭吉が文明開化論を唱え教育の仕組みをつくったように、21世紀もグローバル化と情報革命の波を捉えた教育が必要なのです。こうした時代のなかでは、国や地域の教育から変えていくよりも、サービスというかたちで良いものを提供し、感度の高い生徒/保護者から時代を変えていくほうが教育変革には早いのではないかと考えました。そこで、会社として、「Life is Tech!」という新しいかたちの私塾を立ち上げることにしました。

また、私が仕事をするうえで大事にしていることは、「高い志」、「実行/継続」、「本質」 です。
志は、高ければ高いほうがいいと思います。目標が10ならば80%達成しても8しかできませんが、目標が1000であれば、達成したのが10%でも100の仕事ができます。その志を口に出し、一つ一つ実行して結果を出す。完璧な準備をするよりも、まずは動き、β版でまわし、良いものをつくりあげていく。それを継続することで、結果も、信用力もついてくると思います。私は他の人よりも突出した能力があるわけではありませんが、志を高く持ち、ビジョンをつくることが仕事だと思っています。それをかたちにするのは1人ではできません。社会には役割分担があります。向き不向きがあります。だからこそ、仲間がいるのです。 そして本質。仕事では本質なのかどうかを判断基準にすることが多いです。

最後に、生徒たちに仕事に対するメッセージを記しておきたいと思います。
仕事は、「好きなもの」を仕事にしたほうがいいです。僕の場合は、“中高生の成長過程”。好きであれば、仕事のことをいつでも考えていられます。いつでも考えている人と、9時—17時でしか考えていない人、どちらが結果を出すかは明確です。いつでも考えているくらいでなければ、他の人にはできない価値を産み出すことはできません。そしてそのほうが、何よりも人生が楽しくなります。また、スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の講演で語った“点と点の話”にあったように、将来こうなりたいから、今こうしたほうがいいということではなく、“今”という点が、未来につながっていくということを信じて、今の目標や興味があることを全力で頑張ることが大事なのです。

仕事にまつわる10問アンケート

  1. 今の仕事が好きですか?

    大好きです。

  2. 一生困らないほどのお金が手に入ったら、仕事以外にやりたいことは?

    宇宙から地球を見てみたい。球団を持ちたい。部活の監督として甲子園に出たい。

  3. 仕事で、“鳥肌が立つほど感動した”ことがありますか?
    それはどんなときですか?

    「Life is Tech!」という中高生のITキャンプをやっているのですが、そのはじめてのキャンプを無事終え、参加者が率直な感想を言ってくれているときに、感動しました。

  4. 仕事より大切なものは?

    家族。

  5. 子供の頃になりたかった職業は?

    プロ野球選手。

  6. あなたの子供に仕事のためにどのようなことを身につけさせたいですか?
    (※子供をお持ちでない方は、いると仮定してお答え願います)

    創造力と実行力、勇気。

  7. あなたの仕事にとってコンピュータとは?

    未来をつくるツール。

  8. 仕事で成功するために、もっとも大切なことは?

    高い志と仲間。

  9. いま、1時間だけ自由な時間があったら何をしたいですか?

    子供たちに話をしたい。

  10. 最近読んだ本で、仕事に役立ったのは?

    『Steve Jobs』 [ウォルター・アイザックソン著/ 講談社]

【2012年9月インタビュー】

ピスチャー株式会社 代表取締役
水野 雄介(みずの・ゆうすけ)

【Profile】

1982年生まれ。慶応義塾大学理工学部物理情報工学科、同大学院在学中に、開成高等学校の物理非常勤講師を2年間勤める。卒業後、人材系コンサルティング会社に入社。「教育変革」を掲げ、退社後の2010年7月にピスチャー株式会社を設立。シリコンバレーIT教育法をモチーフとした中高生向けのIT教育プログラム「Life is Tech!」を立ち上げる。
2012年9月現在、延べ1,000名の中高生が「Life is Tech !」に参加している。

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