6年やっていた医者を辞めてMBA留学を決めたとき、「なぜ医者を辞めてハーバードに留学なのか?」と、周りからはさんざん言われました。医者からMBA留学、そして起業という経歴は、人の目には異色に映るかもしれませんが、すべて“医療をより良くする”という観点で動いた結果です。
循環器内科で臨床医として働いていた際に、医療現場でさまざまな問題を目の当たりにしてきました。過酷な労働環境や情報共有が徹底されていないリスク等々、改善できればもっと日本の医療は良くなるのに、と感じることが多々ありました。理想の医療を目指すためには、制度改革という壮大な取り組みが必至で、それをやる人がいないのなら自分がやるしかないと、一からビジネスを学ぶためにMBA留学を決めました。ハーバードでの2年間、これまで医療のことばかり勉強してきたので、ビジネスについて一から学んでいくのは苦労が絶えませんでした。さらに、帰国してからも自分のやりたいことをやれる場がなく、しばらく半官半民で働いていましたが、“自分で起業するしかなさそうだ”と思い至りました。
2011年、一念発起して起業したミナケアでは、「ヘルスケア」の普及を図るための事業を行っています。「ヘルスケア」とは、文字通り、健康をケアすること。医療は病気になってからはじまるもの、という固定観念を捨て、病気にさせないという価値観を根づかせていかないと、社会問題となっている医療費の増大を抑えていくことは難しい。ミナケアでは、健康保険組合などを対象に、医療費を「負担」と捉えるのではなく、未来の健康のために「投資」しているという考えにシフトできるよう、より多くの方の健康をケアする活動を行っていく――。これは、私が医師だった頃の患者さんと1対1のやりとりとは違いますが、一度に100万人規模の患者さんの健康を数値で見ることができ、重篤な病になるのを防ぐための手助けができることに大きなやりがいを感じています。
医療制度の改革という大きな目標に向かっているからこそ、働く姿勢として大切にしているのが「やりきること」。そして、やりきるための判断をぶれさせる、自分のちっぽけなプライドは切り捨てるように努力しています。強い理念を軸に持ち、ぶれずにやりきることが目標へ確実にコミットするための一歩になると考えています。
私にとって働くこととは、医療を良くしようと行動している結果。いつも医療のことを考えているし、それは「仕事」という感覚ではなく、生きていることそのものです。自分の人生をかけて、より良い医療の実現を目指し、医療がもっと日常に浸透するような活動をこれからも続けていきます。
大好きです。
ないです。
まだないです。
自分のビジョンです。
農家です。
考える力、コミュニケーション能力、サバイバルスキル
便利なツールです。
惜しみなく、そこまでやるかというところまで注ぐことです。
仕事します。
1974年生まれ。1999年に東京大学医学部を卒業後、同付属病院や都立病院等で循環器内科などに従事。2007年に日本人医師として初めてハーバード大学ビジネススクール修了(MBA)。日本内科学会認定内科医、日本医師会認定産業医。 2014年日本起業家賞(TEAJ)受賞。
科学技術振興機構フェロー、株式会社キャピタルメディカ最高医療責任者、内閣官房医療イノベーション推進室企画調査官、慶應義塾大学クリニカルリサーチセンター客員准教授などを経て、現在、ソニーコンピュータサイエンス研究所リサーチャーなどを兼任。 2011年2月、株式会社ミナケアを設立。
共著書に、『僕らが元気で長く生きるのに本当はそんなにお金はかからない(ディスカヴァー・トゥエンティワン)』『病院経営のしくみ(日本医療企画)』、訳書に『医療戦略の本質(マイケル・E・ポーターら、日経BP社)』などがある。