長女を出産して育休を取得している時だった。家族で買い物に出かけ、あるショップにふらりと入ったら、キレイな色のニットが並んでいた。セールのシーズンでもないし、いいお値段のニットだったのだが、素材もデザインも気に入って手に取った。すると主人が、「プレゼントしようか」と言った。プレゼント…? 育休中で無給の私が、現実を改めて突き付けられたのはこの時だ。「ああ、今の私は欲しいニットを自分で買うことができない。ダンナにプレゼントしてもらうか、貯金を切り崩すかしかないなんて!」。なんだかやるせない気持ちになり、「自分の欲しいものは自分で買いたい!」、そう思った瞬間だった。
社会人になりたての頃に、実家から通勤していたことがある。その時に父から「精神的な自立と物理的な自立とはリンクしている。本当に自立するために、一刻も早く家を出なさい」と言われた。まったくピンと来ずに腹が立って仕方なかった のだが、今更胸にしみる言葉だ。そして、欲しいニットを自分で買えなかった私と、あの若かった頃の私とが重なってくる。私にとって、「働く」ということは、「世の中に影響を与えたい」「子供の頃からの夢」といった志というより、自分が自分として生きていくために、どうしても必要で自然なプロセスなのだ。
女性の生き方は本当に多様で、世代によっても育ち方によってもまったく異なる価値観があったりする。そこにオトコのようなまっすぐな「王道」はなく、どの道もすべて王道である。専業主婦となって子供と家族のために生きることも、伴侶や子供を持たないことも、自分で決めた生き方はそれぞれが王道だと思う。たくさん枝分かれし、時に迷ったり後悔したりしながら、自分で「えいっ」と道を選んでいくしかない。会社員時代は女性社員としてマネジメントされ、多くのメンバーをマネジメントし、抜擢や降格を経験してきた私も、21年を経て、「えいっ」と起業することに決めた。自分の経験や信念を汎用化しつつ、ほんの少しでも働く女性たちの「えいっ」という選択に寄与したい、そんな女性たちのマネジメントに戸惑う企業経営者と彼女たちとをつなぐ仕事をしたい、と強く思った。会社員という立場ではフルコミットできないテーマだったので起業したに過ぎず、自信も力もなかったのだけれど…。
自分が自分として生きていくために、「働く」「仕事」がマストなのであれば、どうせなら楽しく没頭できる仕事をしていたい。仕事を通して少しでも成長したい。「仕事の報酬は仕事」だとしみじみ思う。新しいわくわくする仕事のご褒美を求めて、今日もまたガリガリ仕事をして、私は生きていくのだ、と思っている。
もちろん楽しい瞬間もたくさんありますが、好きとか嫌いとか、考えたことがありません。
必死に仕事しているだけ(笑)
日本中、世界中の美しいものを見に出かけてみたいです。美味しいものも食べたい!
リクルート時代、自分の仕事によって学生が1万人、テスト会場に集まったのを見たとき。
月並みですが、やはり家族。
小説家、新聞記者、教師あたりです。
人間力。あとは「生き抜きたい」という強い精神力でしょうか。
仕事仲間。いつも話し掛けています(笑)
経験と、人としての魅力。
主人と美味しいワインを飲みに行きたいです。
『ユーミンの罪』 [酒井 順子 著 / 講談社]
解釈が感覚的・経験的でありながら、ものすごく共感させられたので。
上智大学卒業後、1992年に株式会社リクルート入社。
人材ビジネス部門に営業配属され、最優秀新人賞など多くの営業表彰を受ける。営業マネジャー、商品企画マネジャー、「就職ジャーナル」「リクルートブック」の副編集長などを経て、営業組織のマネジメント職としてさまざまな雇用形態の営業組織の立ち上げとマネジメントおよび、販売会社設立時の組織立ち上げ、組織横断での営業推進マネジメントなどを兼務しながら遂行。
2004年に第一子出産・育児休業後、営業・商品企画の製販一体組織の立ち上げ、マネジメントを担当。当時組織では、最年少で唯一女性のカンパニーオフィサーに任用され、「リクナビ派遣」編集長、事業責任者となる。2010年に第二子出産・育児休業後は、復職後のワーキングマザーで構成された営業組織の立ち上げとマネジメントを担当し、ダイバーシティ推進マネジャーとして活動。2013年に退職して起業。
現職では、コラム執筆の他、地方自治体、各種法人に対する、調査、講演・ワークショップ運営やコンサルティング、広報物の制作なども手掛けている。