No.156
株式会社シンクロ
代表取締役社長
オイシックス・ラ・大地株式会社
執行役員CMT
西井 敏恭さん
現在私は、「デジタルマーケティング」を生業にしていますが、そもそも大学の専攻は土木建築。しかも、卒業後に1年勤めて貯めたお金で、2年半ほど世界一周の旅に出ていました。フラフラ遊んでばかりの人生だったのに、それが今では、自分の会社を経営し、同時に上場企業で執行役員も務めて仕事三昧の毎日を過ごしているのですから、人生何が起こるかわかりません(笑)。
マーケティングの世界へ足を踏み入れたきっかけは、世界を旅しながらブログに旅行記をあげていたことでした。2001年当時、Yahoo!のトップページにあったカテゴリ [リアルタイム旅行記] に、私のブログが選ばれてリンクされ、読者が一気に激増し、出版社から本を出してもらうまでに。インターネットの面白さに目覚め、ネット関連の仕事に興味を持ちはじめたのもこの頃です。そんな折、旅行記を読んでいたeコマースの会社の方から求人のお話をいただき、どんな仕事なのかと思っていたら、配属されたのはマーケティング部。ここから私のマーケティング人生がはじまりました。
私が働きだした2003~2004年頃は、グーグルアドワーズやアフェリエイトが日本に入ってきて、SEO、アクセス解析など、次々と新しい手法が台頭してきました。SEOも自分で少し触れば、翌日にはアクセス数が伸び、売上も目に見えて伸びました。とにかくやれば、効果も成果もすぐに出るのが面白く、休みなしでもまったく苦になりませんでした。
そうして仕事にはまり、あらゆることを学んでいくうちに、自分でも起業してみたいと思うように。3年勤めて退職した時点で起業を考えましたが、化粧品のドクターシーラボから声をかけてもらい、まだやったことのないメーカーECの仕事を学ばせてもらえそうだと考え入社。ここでの6年間は、私の基盤を揺るぎないものにしてくれました。
入社前から起業することは決めていたので、2013年末にシーラボを退職し、休息と新しいビジネス探しを兼ねて、10年ぶりに再び海外放浪へ。すると、日本のいろいろな企業からマーケティングの相談や仕事の依頼が次々に。ここで改めて、人も知識も足りていない日本の現状を実感し、「デジタルマーケティング」を核にした起業を決意しました。そして、起業と同時にオイシックスの執行役員にも就任。放浪先の海外からSkypeでコンサルをしていたご縁で、入社を勧められたのですが、起業の決意を伝えたところ、オイシックス(現:オイシックスドット大地)の社長の高島から「2つやればいい」と言われ、そのような人生も面白いかなと思って、現在の肩書きになりました。
シンクロでは、企業コンサルに加え、他社と業務提携して新たなWebメディアも展開しています。オイシックスでは、社外役員などではなくて社内の執行役員という形で勤務。野菜を扱うのはとても難しく、シビアな管理体制とロジカルな仕組みが整えられた会社なので、自分の会社を経営していくうえでも学ぶことが多々あります。
八百屋、その前は化粧品と、学生の頃は想像もしなかったさまざまな業界に深く関わり、興味の幅や知識が広がり、自分の世界が広がっていくのが働く楽しさ。自分が知ってること、得意なことだけ続けるのではなくて、知らないことや苦手なことを乗り越えていくことは、言葉も通じない世界中の知らない国を放浪するような、そんな不安だけどワクワクするような気持ちでいつも仕事に取り組んでいます。今は、きちんとマーケティングができる世界を作りたいと考え動いています。この仕事の重要性を可視化する、仕事の魅力を伝えるなどして、マーケターになりたい人を増やし、マーケターが活躍できる環境を整えていくことが直近の目標です。でも、10年後はどうなっているかわかりません(笑)。やりたいことを全部やろう、と思っています。
私の働くうえでのポリシーは、「かっこ良くあろう」。好きな女性や大切な仲間の前で会社や同僚を愚痴ったり、夢ばっかり語って全然何もしていないのってかっこ悪いじゃないですか。とぼけた顔して実は人の10倍くらい働いて、誠実で価値ある仕事をして色んな人から10倍感謝される。仕事ばかりしてると思ったら、アフリカの奥地とかを冒険してる、そんな楽しそうな生き方をしていきたいと思っています。
『インバウンドマーケティング』[高広伯彦 著 / SBクリエイティブ]
毎年100冊くらい本を読んでいますが、この数年の中で「マーケティング集客」の意味合いが変わってきたことを気づかせてくれた一冊です。
これまでのマーケティングは、企業から消費者へ情報をどう発信する(アウトバウンド)か、でした。デジタル、SNSなどにより情報が多くなって、消費者が欲しい情報だけを見る時代になった、という話は10年以上前から言われているかもしれませんが、では、どうやればいいか。LOVABLE(愛される)になることで、お客様が欲しいタイミングでほしい情報を取りに来る(インバウンド)状態になること、は単なるSEOやメールマーケティングの話ではなく、企業そのもののあり方だと思います。
株式会社シンクロ
代表取締役社長
オイシックス・ラ・大地株式会社
執行役員CMT
西井 敏恭 (にしい・としやす)さん
1975年、福井県生まれ。1999年に金沢大学大学院卒業。2001年から2年半「世界一周の旅」に。その際のWebの旅日記が人気となり3冊の旅の本を出版し、2003年からECの世界へ。小売サイトやモバイルEC、単品通販など大小さまざまなネットショップをはじめ、2013年末までは株式会社ドクターシーラボにてデジタルマーケティングの責任者(CMO)を務めるなど、Eコマースのマーケティングを10年ほど経験。
前職退職後、南極などを旅行した後の2014年6月に帰国して7月に起業。株式会社シンクロでは、CMOのアウトソース事業として、国内大手通販からスタートアップ企業のマーケティング支援や、企業と連携したデジタル事業を協業で手がけながら、オイシックス・ラ・大地株式会社のCMO(※)にも就任。次世代のEC戦略を先導している。
※2018年7月よりオイシックス・ラ・大地株式会社へと社名変更。併せCMT(チーフ マーケティング テクノロジスト)に。
【2017年11月インタビュー】
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