No.168
株式会社エニタイムズ
代表取締役CEO
角田 千佳さん
子供の頃からずっと、国連で働きたいと考えていました。
小学生の頃にニュースで見た、世界の貧困地域の状況や、当時国連難民高等弁務官だった緒方貞子さんの活躍に感銘を受け、将来は開発途上国で開発援助や街づくりをすることを目標に生きてきました。その気持ちは大学の就活時も変わりませんでしたが、国際公務員の前に、まずはビジネス経験を積みたいと考え、民間企業で働くことに。そして、ビジネスや経済について幅広い視野で学ぶことができると考えた、業界トップの野村證券に入社しました。約2年半勤めるなかで、さまざまな業種の企業と接し、また、数多くのベンチャー企業の存在も知るうちに、次第とビジネスによる社会課題解決の可能性を考えるようになっていきました。「0から1を作る仕事」をしてみたいと考えていた折に、学生時代にインターンをしていたサイバーエージェントの元上司が新しくPR会社を立ち上げた話があり、そこに私も転職させていただくことを決めました。
転職後は、新しい環境で仕事も充実していましたが、並行して国際公務員に向けて、大学院受験の勉強もはじめていました。そんな折、国連と関連している仕事に就いている友人から、「あなたのやりたいことは、国連でなければできないの?」と問われ、その言葉にハッとしました。確かに、自分がやりたいことは起業してビジネスというかたちで取り組むこともできる。また同時に、日本社会で5年間働いているなかで、開発途上国だけでなく、むしろ身近な日本にも多くの社会課題があることも実感していました。特に大きく2つの社会課題です。1つ目は、今後加速していく高齢化社会において、地域内の互助システムが必要不可欠であること。2つ目は、仕事や会社をネガティブに捉えている日本の現況。世界の貧困地域へ行った際に、決して裕福ではない彼らよりも、日本の働く人々は憂鬱そうな人が多く「裕福さと幸福度は比例しない」ことを実感していました。そこでまずは、そういった身の回りの日本の社会課題から解決していきたいと考え、“豊富な幸せの尺度を持った社会の実現”を目指し、起業を決意。それが、現在のエニタイムズのサービスにつながっています。
2013年に株式会社エニタイムズを設立し、日常のちょっとしたお困りごとを簡単に依頼・請負できるサービス「ANYTIMES(エニタイムズ)」をリリースしました。アプリを使うこのサービスは、仕事を依頼する側と請け負う側の個人同士が責任を持ってやりとりするプラットフォームで、現在のユーザー数は約5.2万人。20代後半から40代前半の方が大半を占め、男女比は約半々です。最近はシニア層のユーザーも増えはじめ、創業から6年の間のITリテラシーの変化を感じています。人気のあるカテゴリは掃除と料理で、依頼ニーズの高いユーザーさんの何人かは独立して起業しました。彼らから、『自分のスキルに自信が持て、起業までできて人生が変わりました』といった言葉をもらったときは感動しましたし、このサービスを続けてきて良かったと強く思いました。今後は、自治体や他社とも協力しながら全国にこのサービスを波及させ、より多くの方々の生活を豊かにすることができるようにしていきたいです。
私が働くうえで大切にしている言葉に、『愚公移山※』があります。どんなに困難なことも諦めずコツコツやり続ければいつか必ず叶うー。私たちのサービスは、まさに小さい積み重ねの連続ですが、地域社会や高齢化社会に絶対必要なサービスになると信じているので、これからも小さな一歩一歩を踏みしめながらやり続けていきます。
※『愚公移山』
中国の愚公という名の老人が、家の前にある二つの大山をほかへ動かそうと土を運びはじめた。人々はその愚かさを嘲笑したが、愚公は子孫がその行いを引き継げば山を移動させられるだろうと、一向にひるまなかった。その志に感じ入り、天帝(神様)が山を移動させ平らにしたという故事に基づく。(『列子』湯門篇より)
株式会社エニタイムズ
代表取締役CEO
角田 千佳(つのだ ちか)さん
1985年東京生まれ。慶應義塾大学(法学部政治学科)卒業。2008年に新卒で野村證券に入社し、その後IT企業を経て、”豊富な幸せの尺度を持った社会の実現”を目指し、2013年5月に株式会社エニタイムズを創業。同年末に、犬の散歩や家具の組み立てなど、日常のちょっとしたお困りごとを簡単に依頼・請負できるサービス「ANYTIMES」をリリース。
【2018年11月インタビュー】
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