No.175
アルクテラス株式会社
代表取締役社長
新井 豪一郎さん
「教育分野」で起業しようと思ったのは、自分が子どもの頃、学校の勉強ができなかった経験からでした。
小学生の頃、先生が一方的に説明する授業が身に入らず、あるときから自分で参考書を使って勉強することに。すると次第に勉強ができるようになり、自分が、図解や記述内容を見て理解するのが得意な“視覚優位”の学習タイプなんだと気づきました。学校の授業は、異なる一人ひとりに合わせたものではないので、自分のような落ちこぼれが生まれやすい。そこで、ITを使えばもっと個々に最適化した学習が可能になるのでは?と考え、事業の軸を教育サービスに据えました。
職歴としては、新卒でNTTに入社。その頃はネットベンチャーがいくつも立ち上がっていた時代で、先輩たちのなかにはネット事業をはじめる人たちも。そのとき初めて、働き方には“起業”という選択肢があることを知り、起業意欲が高まりました。そこで、退職後にMBAを取得して、その後コンサルティングファームに3年間務め、起業のため2006年に退職しました。幼児向け知育サービスの事業化を考えるなかで、星野リゾートとの提携を思案しましたが、伝手がないので、同社の採用募集に応募して、最終面接で星野社長と会えることに賭けました。結果、直接話す機会が得られ、正直に「採用希望ではなく、知育サービスをはじめるので提携してほしい」と嘆願。唐突な申し出にも関わらず承諾いただき、事業プランの具体化を進めていきました。ですが、利益を出すのが難しいとわかり、このプランは断念することに…。改めて星野さんと話している時に、『一度、経営者としての経験を積んだほうがいい』と助言され、ちょうど星野リゾートがはじめたスキー場の再生事業の責任者として、経営を任されることになりました。
必死で働いていた2007年2月、スキー事故に遭い死に直面してハッとしました。「人生には限りがある。やりたいことは悔いのないようにやっておこう」。そこで、任された仕事と並行して、改めて教育サービスの事業計画を練り、2012年10月に大学院同期の友人(現・副社長)と株式会社アルクテラスを立ち上げました。創業当初は、中高校生向けのマンツーマン個別指導塾を展開し、そこで見えてきた、「勉強はわからないことが解決できないとくじける」という課題に着目し、“わからないことが家で解決できるサービス“を考えた結果、学習ノート共有アプリ『Clear』が生まれました。
無料で利用できる『Clear』は現在、全世界250万人以上のユーザーがいて、主に中高生が試験対策に利用しています。海外では、タイ、台湾、中国、インドネシア、香港でサービスを開始。嬉しいのは、「勉強が好きになった」「成績が上がった」という各国から届く学生の声。さらに今後は、韓国やロシア、ヨーロッパ圏にも展開予定です。そして、どこに住んでいたとしても一様に良質なコンテンツを届けることで、世界中の教育格差をなくしていきたいと考えています。
私にとって働くことは、最高の贅沢。世の中には働きたくても働けない人もいます。私はいま、自分の志を実現するために働けることを心から幸せだと思っています。1人でできることの総和より、チームで実現できるひとつのことのほうが偉大だと思っているので、一緒に働く仲間と「アグレッシブな知能集団」として、今後もチャレンジを続けていきます。
異文化理解力― 相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養[エリン・メイヤー著 / 英治出版 ]
サービスをグローバル展開しているので、特に“異文化の理解“は大事にしています。
アルクテラス株式会社
代表取締役社長
新井 豪一郎(あらい ごういちろう)さん
1974年生まれ、イギリス、オーストラリア、日本育ち。慶應義塾大学では体育会空手部で稽古に明け暮れる日々。1997年に大学卒業、NTTに入社。その後、自分の価値観を世に問うために起業家を目指し、2003年に慶應義塾大学大学院MBAを取得して、米系コンサルティングファームPRTM(現PwC)に入社。戦略コンサルタントとして3年間修行した後の2006年に株式会社 星野リゾートに転職。スキー場再生事業の責任者を務める。2007年のスキー事故を機に、「革新的な教育サービスを通じて、世界の可能性を拓きたい」という思いの実現を決意。2010年にアルクテラス株式会社を創業、代表取締役社長に就任。
【2019年6月インタビュー】
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