No.177
cotobox株式会社
代表取締役
五味 和泰さん
高校時代に横浜に住んでいた私は、超高層ビルを中核とした『横浜みなとみらい21』の都市開発が進んでいくのをずっと見ていました。日に日に新しく作られていく街の様子を目にして、いつか自分もこうした大きなプロジェクトに関わりたいと思ったのが、最初に建築業界に進んだきっかけです。新卒で建築設備会社にエンジニアとして入社し、10年ほどさまざまな建築プロジェクトに携わりましたが、30歳という節目に、そろそろ新しいことにチャレンジしたいと考えるようになりました。
ちょうどその頃「知財」のことが話題になっており、これまでの仕事とはまったく異なる弁理士の資格にチャレンジしようと思い立ちました。そこで、特許事務所で働きながら勉強を続け、4度目の受験で無事合格。晴れて弁理士としての新たなキャリアをスタートしました。そのまま順調に仕事を続けることもできましたが、英語が自分の弱点になっていると感じ、40歳でアメリカ西海岸のロースクールへ留学。2014年当時、アメリカではスタートアップや新しい会社が次々に立ち上がっていく勢いがあり、それを目の当たりにして、“まだ、日本で誰もやっていない知財のスタートアップとして起業してみたい”と思うように。留学前までは自分が起業するなんて夢にも思っていませんでしたが、復帰する予定だった事務所に「退職します」と申し出て、帰国後、約半年間の準備期間を経た後にcotobox株式会社を設立しました。
「Cotobox」(コトボックス)は、誰でも簡単に最短1日で出願できる商標登録Webサービスで、AIを活用して人件費などを抑えることで低価格化を実現しています。そもそも、このサービスに取り組んだのは、「知財を誰もが平等に取り扱えるようにしたい」という想いから。日本における知財は、まだまだ一部の大企業だけが活用している現状があり、ときに知識のない人たちが損をしたり、知らずに権利の侵害をしてしまったりすることも。そうした不平等をなくし、小さな会社や個人事業主などが、気軽に使えるサービスとして広がっていくことを第一に考えています。
そのためにも、ユーザーとの距離を近づけるための工夫や改善を重要視していて、当社のサイト来訪者が最も知りたい情報だと思われる、「そのネーミングがすでに商標登録されているか」を無料で検索できるようにしてあります。また、実際に商標登録するとなったら、チャットで弁理士と手軽に相談ができるので、「特許事務所に行くのは敷居が高い・・・」と感じる若い人たちにも好評です。実際、サービスは口コミで広がっていて、利用者からの感謝の声はとても励みになります。また、改善スピードが速まるのでクレームも大変ありがたく、日々改善を重ね、将来的には海外展開するのが目標です。
人生の節目ごとに、自分の立ち位置を見極めながら新しい方向に舵を切ってきた私にとって仕事とは、生きている意味をもたらすもの。人生で優先すべきは健康やプライベートで、身体を壊すまで働くのは本末転倒だと思いますが、仕事で得られるものもあり、仕事があるほうが生きがいもある。これからも、人にとって喜ばしい体験や新しいコトづくりを推進するために、仲間とともに新たな価値を生み続ける存在でありたいと思っています。
cotobox株式会社
代表取締役
五味 和泰(ごみ かずやす)さん
1973年生まれ、神奈川県出身。1996年 早稲田大学(理工学部)卒業。新卒で入社した建設会社を経て、2005年にYKI国際特許事務所に入所。約10年間、知財実務に従事。2014年に米国 南カリフォルニア大学ロースクールに留学。留学中にスタートアップのイベントやプログラムに参加し、知財 x テクノロジーの将来性に気づく。卒業後、中南米の旅行中に“Cotobox”というネーミングを思いつき、すぐにドメイン名を取得。2015年にはつな知財事務所を設立。2016年2月にcotobox株式会社を設立。日本弁理士会、日本商標協会に所属。
【2019年8月インタビュー】
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