私の社会人デビューは人より遅く、31歳の時。
20代の間は、海外でしばらく暮らし、自身の知見を広げて経験値を積むことに費やした。帰国後、その歳で社会人経験がなくては就職が難しく、友人と会社をつくることに。時代はちょうどコンピュータを個人で作れるようになった頃。パソコンを一から勉強し、同時に仕事も受注していった。その頃の仕事とは、生計を立てる手段であり、かつ楽しんで没頭できるものだった。
その後、コンピュータ業界は群雄割拠の時代へ。我々が新しく開発した商品も、すぐどこかに真似され、半値で売られるような流れのなか、技術の切り売りをしていくこの分野では未来がない、とシフトチェンジを決意。そして、現会長の滝氏との出会いによって、ぐるなびを背負って立つ現ポジションへ辿りついた。
仕事における出会いというのは、大変大きな力を持っている。滝氏との出会いにより、NKBでメディア作りに携わるようになり興味を持った。そして、結婚式場紹介の仕事で500店ものレストランとおつきあいがあったから、飲食店情報検索サービス『ぐるなび』が生まれることになった。
世界的に自給率などの食糧問題や環境問題が取り沙汰される今、「食」の問題に取り組む手始めに、ぐるなびでは「地産他消」を掲げ、動きだしている。「地産他消」とは、大量消費地である都市部で各地の食材の消費拡大を図ること。作っている人の顔が見え、想いが伝わるような仕組みを作り、「より質の高い農産物を作ろう!」という生産者の原動力につなげたい。生産者と消費者を良好につなぐインターネットサービスの展開が、より良い明日への一歩になると信じている。
結局、仕事で一番大切なのは「想い」。私自身、ぐるなびと社会とのつながりを実感しながら、仕事への熱い「想い」でこの10年あまりを駆け抜けてきた。そして、やりたいことはまだ山のようにある。自分の中に「想い」が湧きあがる限り、走り続けていきたいと思う。
はい。今の仕事を楽しんでもいますし、ほとんどの時間を、今の仕事とこれから手掛けていきたいことに費やしています。
世界が直面している環境問題や食糧問題など、いわば国家レベルとも言える問題に取り組んでいきたいですね。
サイト設立から2年目ぐらいに、自分たちの存在が下から押し上げられていくような感じが数カ月ほど続きました。視界が広がり、周りがよく見えるようになり・・・。そのときは、まさに鳥肌が立つような感覚でした。
社会との関わり、家族。私を含め、社会との関わりを持ち続ける家族でありたいです。
小学校の頃は、大工になりたいと思っていました。親は納得していませんでしたが(笑)
個性や資質の見極め、社会への適応力やつながりを明確にするためにも、一度は人間にとって窮屈とされている「型」にはめることが大切だと考えています。
物事を考えるためのツールであり、思考をカタチにするための有効なツール。
「想い」です。どんな仕事でも、いくら技術があっても、どのような「想い」をもって臨むのか?がないと、成功もしないし価値も持たないので。
1時間なら読書ですね。空き時間に読めるように、常に何らかの本を持ち歩いています。
『「命令違反」が組織を伸ばす』
[菊澤研宗 著/光文社新書]
限定合理主義の経済学者の著書で、経営者として薦めていいのか迷いますが、面白かったです。その他、生物学者で分子生物学専攻の福岡伸一さんの本。
1945年東京生まれ。東京工業大学卒。1977年にコンピュータ開発会社を設立し、1984年に(株)NKBに入社。1996年の常務取締役に就任時に、同社の一事業部として飲食店情報検索サイト『ぐるなび』をインターネット上に開設。2000年2月、(株)ぐるなび発足と同時に常務取締役に。2001年6月に社長に就任し、現在に至る。
2009年に8月に立ち上げたサイト「ぐるなび地産他消ナビ」を通じて、国内の産地と東京をつなぐ新しい食の楽しみ方を提案している。