僕の父親は家具屋をやっていて、とても楽しそうに働いていたのを覚えています。お客さんとのコミュニケーションを楽しみ、家具を良く見せる配置を工夫して、店に愛情を注いでいた。幼い頃から見ていたその姿が、僕の「働くこと」のイメージとして根づいたのは確かです。僕のコミュニケーション手段はデザインですが、「愛情を持って仕事を楽しむ」という根っこの部分は同じなのかもしれません。
「この仕事をやってみたい」、とはっきり意識したのはインテリアデザインの学校に入った後です。自分がよく通っていたファッションブティックや遊びに行く場所が、インテリアデザイナーという職業の人が作った空間だと知り、デザインが人と人をつなぐ「コミュニケーション」の手段だと気づき興味をもちました。しかし、インテリアデザイナーとして独立した92年はバブル崩壊の後。仕事がほとんどない時期が続きました。時間はあり余っていたので、「人に求められるデザイン」について突き詰めて考えました。表層的な格好良さだけでなく、核の部分に踏み込むこと。お客さんの目線で徹底的に空間を練り上げること。そして、クライアントの“想い”をしっかり汲み取ること。これができれば、僕らデザイナーの存在価値が認められると思いました。そして、この時期に考え抜いたことがいまの自分につながっています。
現在の仕事は8割が海外のプロジェクトで、それはユニクロの海外旗艦店プロジェクトに関わったことが大きいと思います。一番初めはNYのソーホーで1,000坪の店を出す、というユニクロが社運をかけたプロジェクト。こんな大きな事業に自分が寄与できたことは、デザイナーとして大きな出来事でした。その後、ロンドン、そしてパリがオープン。パリのときは、並ばないと言われているフランス人が開店時に1,000人近く並んでいたので、それを見たときは感動しました。この仕事が社会とつながっていることを強く実感した瞬間でした。
今後の夢としては、学ぶことをより深く楽しめる学校や、自己治癒能力が高まってハッピーになれるような病院などを手掛けてみたいと考えています。既成概念を打ち破り、社会に役立つデザインの提案を多方面でしていきたいです。
僕にとって仕事は、“自分を覚醒させるもの“です。仕事をしているから自分は輝いていられると思いますし、社会から求められる喜びがあります。これからも求められ続けるために、誠実に、そして、自分自身が楽しみながら、ずっとこの仕事を続けていきたいと思っています。
好きです。とても自分に合っていると思いますし、仕事というよりライフワークに近い感じです。
仮に、世界旅行に出たとしても、1週間もしたら仕事のことが気になって安らげがない気がしますね。結局仕事が、いろいろな意味で自分を支えているので、やはり仕事をしたいですね。
初めてNIGO®さんとお仕事をご一緒した、NOWHERE(BUSY WORK SHOP® 原宿)というショップのデザインを任せていただいた時です。
求められたものに応えることができたという実感と、自分の枠や既成概念を縛られず、自分の可能性を広げることができたという感覚があって、感動も大きかったです。NIGO®さんとも良い関係が築くことができ、自分にとっても大きな転機になりました。
家族。そして自分自身。ナルシストな意味ではなく、自分を大切にすることが基本だと思います。
プロ野球選手。その後はロックミュージシャンなどに憧れていました。デザイナーになるとは夢にも思っていなかった。
素直さ。悪かったと思ったら「悪かった」と言えること。そういう人は愛されると思いますし、伸びていきます。
あとは、楽観的な部分も必要。「今日だめなら、明日はいいことある」と思えるような。思い詰めてしまわないようにしてほしいですね。
手で図面を描いていると、寸法が曖昧なので詰め込みすぎることがあるんですが、パソコンはそういった僕の「できるんじゃないかな?」という“淡い期待”を、冷静に判断してくれる点が良いですね。
ネットワークという部分では、海外の仕事が8割という現況に大きく寄与してくれています。どんなに大きな案件も、メールでオファーがくる時代ですし、図面の確認もデータとネットワークで飛躍的にやり取りがスムーズになりました。
仕事に対して誠実であること。そして、自分も楽しむことが大切です。自分が愛情をこめて楽しんで作ったものは、クライアントにも伝わります。「楽しみ」を次の人へ手渡ししていく感じです。
アロママッサージ。60分しっかり施術を受けたいです(笑)
『秋元康の仕事学』 [NHK「仕事学のすすめ」制作班 編/ NHK出版]
テクニックの話ではなく、違った角度から考え方を解説されていて、
目から鱗が落ちるような思いで読みました。
1966年 岡山県生まれ。2000年、ワンダーウォールを設立。クライアントのコンセプトを具現化する自由な発想、また伝統や様式に敬意を払いつつ現代的要素を取り入れるそのバランス感覚が、国際的に高く評価されている。
主なプロジェクトは、BAPE STORE®/A BATHING APE®各店、ユニクロ海外旗艦店(NY、パリ、ロンドン)、NIKE原宿、colette(パリ)、PASS THE BATON(丸の内、表参道)、DEAN&DELUCA(六本木、名古屋他)、ピエール・エルメ・パリ 青山、2011年5月にオープンしたホテル、ザ・リッツカールトン・香港のメインバーOZONEなど。2011年4月、武蔵野美術大学空間演出デザイン学科教授に就任。