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リレーエッセイ Vol.90 山内 悠太さん:当事者意識を持ってチャレンジの機会をつかみにいく

「将来に不安を感じている」 77.7% ―。※
いま、高校生の実態調査ではこんな数値が出ています。そんな高校生たちに、未来を生き抜く力や夢やビジョンを描く力を引き出すための学習機会を提供する―― 。それが、カタリバの行っている活動です。

カタリバの活動は、不安を抱える高校生と現役の大学生が語り合うことで、より良い方向に変えていくことを核としています。私自身も、大学時代にボランティアスタッフとしてカタリバに参加して高校生たちと向き合ってきました。彼らのなかにある将来に対する曖昧なイメージが、ほんの数年前まで同じ高校生だった先輩の話を聞くことで少しずつかたちになりはじめる・・・。失敗談や困難をどう乗り越えたかの話を聞き、私たちと対話していくうちに彼らの目の輝きが変わる一瞬を何度も見てきました。それは、曖昧だった何かが“夢”というかたちとなり、「自分もやってみよう!」というエネルギーに転換される瞬間です。

私は大学卒業後、一度は企業に就職しましたが、2011年にカタリバに戻りました。その最大のきっかけは東日本大震災です。就職後も、「いずれ、ソーシャルビジネスや社会起業の分野で仕事をしたい」と思っていましたが、現状に安住して行動しないままでいました。それが、大震災を目の当たりにし、“もしかしたら、明日命を失ってもおかしくない。やりたいことを後回しにしていたら、きっと後悔する!”ということに気づき、カタリバで働くことを決めました。
また、私が働くうえで大事なもののひとつだと考えるのは“当事者意識”です。カタリバには、スタッフ全員で話し合って決めた『カタリバの約束』(クレド:行動指針)がありますが、そのなかには、「課題を発見したら、誰もが手を挙げられる。一人ひとりが当事者としてチャレンジの機会をつかみにいこう」と記されています。みんなが当事者意識をもてる組織や社会になれば、いまある問題の半分くらいは解決するのでは、とも思います。

現在カタリバでは、高校生を対象としたキャリア学習事業の一方で、東北復興支援として、学ぶ場所を失った子どもたちの放課後学校『コラボ・スクール』も行っています。震災直後は生きる希望を見出せない子どももいましたが、最近では未来のことを考えられる心境に変わりつつあり、その目は確実に未来を見つめています。一人ひとりが、自分たちが生まれた故郷のためにできることを考え、未来へ力強く歩きだしています。そんな姿に、私自身が日々励まされ力をもらっています。
人は、“周りの環境や人との出会い”といった偶発的なことを通じて前向きに変わっていくことが可能です。将来に不安を感じている高校生のことも、被災地のことも、同じ時代を生きる当事者として、そしてカタリバとして、今、何ができるのかを考え続け取り組んでいきたいと思います。

※出典:財団法人日本青少年研究所 「高校生の心と体の健康に関する調査」(2011年3月)、「中学生・高校生の生活と意識」(2009年2月)

仕事にまつわる10問アンケート

  1. 今の仕事が好きですか?

    はい、好きです。

  2. 一生困らないほどのお金が手に入ったら、仕事以外にやりたいことは?

    仕事以外だと、自分が好きだと思うものを世に広めるために使いたい。具体的には、大学生の頃に熱中していた“ビーチフットボール”を、もっと人々に知ってもらうための広報活動。

  3. 仕事で、“鳥肌が立つほど感動した”ことがありますか?
    それはどんなときですか?

    東北の被災地で運営している「放課後学校」の生徒さんたちが、東京に来て支援者の方々にお礼をする機会がありました。その際に、生徒たちが将来の夢を語ってくれたとき。感動して涙が出ました。

  4. 仕事より大切なものは?

    お世話になった人たちや、一緒に頑張った仲間。

  5. 子供の頃になりたかった職業は?

    子どもの頃は、弁護士や官僚になりたかったです。

  6. あなたの子供に仕事のためにどのようなことを身につけさせたいですか?
    (※子供をお持ちでない方は、いると仮定してお答え願います)

    自然のなかでの体験や海外に出てコミュニケーションすることも大切ですが、
    私自身がしておいて良かったと思うのは、よく本を読むこと。

  7. あなたの仕事にとってコンピュータとは?

    人の仕事を代替してくれるもの。
    コンピュータではできないことに、現在私たちは集中できるようになりました。
    だからこそ、コンピュータにできることをしていては、仕事を失ってしまうという焦りも覚えます。

  8. 仕事で成功するために、もっとも大切なことは?

    自分が、一番できることや得意なことに集中する。
    そして、自分ができないことはほかの人と協力したり補完しあっていくこと。

  9. いま、1時間だけ自由な時間があったら何をしたいですか?

    海を眺めながらぼーっとしたいです。

  10. 最近読んだ本で、仕事に役立ったのは?

    日本で今後どんな仕事が残っていくのか、「生き抜く力」とは何かに迫る本でした。
    教育に携わる者として「生き抜く力」をテーマとして深めているので役立ちました。

    『10年後に食える仕事、食えない仕事』 [渡邉 正裕 著/ 東洋経済新報社]

【2012年10月インタビュー】

特定非営利活動法人 NPOカタリバ
広報・ファンドレイジング部 部長
山内 悠太(やまうち・ゆうた)

【Profile】

2005年、東京大学在学時に草創期のカタリバにボランティアスタッフとして参加。
大学卒業後、大手電機メーカー(CSR)、広告代理店(ダイレクトマーケティング)などを経験。2011年8月、NPOカタリバに職員として参画。Webサイトの運営やマスコミ向け広報、寄付や助成金による資金調達等を担当。

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