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リレーエッセイ Vol.95 南 章行さん:自分発信の“変化”を起こす

「総理大臣になろうと、乞食になろうと、お前の人生だから好きに生きなさい」。
これは、僕が小学2年生のときに親から言われた言葉です。当時は衝撃を受けましたが、いま思うととてもありがたい教育方針だったと思います。おかげで、大学卒業後に銀行、企業買収ファンド、そしてMBA取得を経て起業するまで、“自分の責任のもとに、本当に自分がやりたいこと”に邁進することができたからです。

銀行と企業買収ファンドで社会の仕組みを学び、意思決定するための“軸”を確立させるため33歳でオックスフォードへMBA留学。多種多様な価値観や人種のなかで揉まれ、金属を叩くがごとく打たれて現在の自分が形成されました。そして、気持ちも新たにヘルスケア事業の会社を立ち上げましたが、サービス開始直前に、ビジネスとしてどうしてもうまくいかない盲点が浮上したため、やむなく白紙に。この決断は本当に辛く、ゼロから1を生みだすことの難しさを痛感しましたが、それでもまだ自分たちの手のなかには、小さなビジネスの種が残っていた。それが、現在運営している『ココナラ』のもとになるアイデアです。
引き金になったのは、ヘルスケア事業の準備中に栄養士の方から聞いた「病院で栄養相談の仕事をしているが、もっと多くの人に栄養の知識を提供できる機会があればよいのに・・・」という話で、栄養相談のような“小さくてビジネスにならないようなことでも、潜在的ニーズのあるサービスを提供する場をつくれば利用者は拡がるのでは”と、ひらめきました。

現在では『ココナラ』は、自分の得意なことで誰かの役に立ち、自らも学ぶ場として、出品数5,000を超えるプラットフォームサービスになりました。仕事するうえで僕が大切にしている言葉に 「門を開ける鍵を持っている人は、門番の格好をしているとは限らない」というものがあります。これは、目指すゴールに行きつくためには、寄り道や遠回りであっても、より好みせず多くの人と会って話していくことで思わぬアイデアや縁を得られるという恩師からの助言で、このことを僕はアイデアの具現化を通じて身をもって知りました。

僕にとって「働くこと」とは、自己表現そのもので、自分の存在する意味を見つける活動です。この世に生を受けたからには、何らかの意義を残したい。だからこそ、自分発信で世界に何らかの“変化”を起こしたいと考えています。僕の作ったサービスによって、世の中の暮らしや人々の気持ちがほんの少しでもハッピーな方向に変わっていく・・・。そんな変化の総量を、『ココナラ』を通じて増やし続けていきたいと思います。

仕事にまつわる10問アンケート

  1. 今の仕事が好きですか?

    自分で立ち上げた会社ですし、もちろん好きです。

  2. 一生困らないほどのお金が手に入ったら、仕事以外にやりたいことは?

    自分がやっていて楽しくて、かつ人に何らかの影響を与えることをやりたいです。
    例えば、自分の好きなバンドを一堂に集めた大イベントをやるとか。そこでは、見る側でなく大勢の人が楽しむ様子を見る側(仕掛ける側)でいたいので、そういうことにお金を使いたい。

  3. 仕事で、“鳥肌が立つほど感動した”ことがありますか?それはどんなときですか?

    前職の企業買収ファンドで、大手企業の買収に“勝てる”と確信したとき。
    まだ無名の20名程度の会社でしたが、優秀な人たちと一気に3時間ぐらいディスカッションしていくなかでコンペに勝てる道筋が目の前に広がっていった瞬間。

  4. 仕事より大切なものは?

    仕事とそれ以外という区分がないので、“仕事よりも”という視点で考えるのは難しいです。
    しいて言うなら、人生そのもの。

  5. 子供の頃になりたかった職業は?

    特になかった。現実的で斜に構えた子供だったので、小学校の卒業文集では「大きな家、大きな車、屋上にヘリポートのある暮らし」をしていると書いた・・・(笑)

  6. あなたの子供に仕事のためにどのようなことを身につけさせたいですか?
    (※子供をお持ちでない方は、いると仮定してお答え願います)

    チャレンジ精神。できれば、他人を巻き込んだチャレンジをしてほしい。
    他人の分の責任も受け止め、ものすごく悩んだり失敗する経験を積んでおくほうがよいので。

  7. あなたの仕事にとってコンピュータとは?

    iPhoneもパソコンとするなら、朝起きてから寝るまでずっと触っている、いわば体の一部です。

  8. 仕事で成功するために、もっとも大切なことは?

    自分にとっての成功は、「楽しく仕事ができていること」。だから、熱中できることを見つけ、楽しく仕事をすること。

  9. いま、1時間だけ自由な時間があったら何をしたいですか?

    24時間、自由に選択して過ごしているため、“時間が空く”という感覚があまりないのですが、仕事場から離れるとしたら、音楽を聞くか本を読みます。

  10. 最近読んだ本で、仕事に役立ったのは?

    『信頼の構造 こころと社会の進化ゲーム』[山岸 俊男/東京大学出版会]
    人を信頼するのが苦手な日本人と得意なアメリカ人。その背景にある「安心」と「信頼」の差を、民俗学的な観点から考察する1冊。ビジネスを考えるときのスタンスの取り方に役立ちました。

【2013年2月インタビュー】

株式会社ウェルセルフ 代表取締役
南 章行(みなみ・あきゆき)

【Profile】

慶応義塾大学を卒業後、1999年4月、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。運輸・外食業界のアナリスト業務などを経験したのち、2004年1月に企業買収ファンドのパイオニアであるアドバンテッジパートナーズに入社。5件の投資案件を担当し、投資先企業の役員としての経営改善活動や、良好な投資リターンの実現に貢献。
2009年、英国オックスフォード大学経営大学院(MBA)を修了。現地で出会った「音楽を使った若者向け社会起業プログラム」ブラストビートの日本法人(NPO)設立を主導したほか、オックスフォードの同期が設立したNPO法人二枚目の名刺にも加わるなど、個人の自立・自律をサポートする活動に積極的に参加。
2011年6月、東日本大震災をきっかけにアドバンテッジパートナーズを退社し、株式会社ウェルセルフを設立。

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