新しい資格、新しいスキル、新しいキャリア。 株式会社 オデッセイコミュニケーションズ

新しい資格、新しいスキル、新しいキャリア。 株式会社 オデッセイコミュニケーションズ

Topics インタビュー

2021.02.18

この先も活躍できるビジネスパーソンとして、
仕事に役立つ「統計リテラシー」を学ぶ。

~「統計」の講座立ち上げの意図と利用状況を聞く

1980年の創業以来、公認会計士や税理士、公務員、社会保険労務士、建築士等々のさまざまな専門職に就くための資格取得の学習支援を行ってきた「資格の学校TAC(タック)」。直営校/提携校(全36校)以外に、オンラインを通じて受講できるWeb通信講座も展開する同社では、2019年に統計を学べるWeb講座を開始。この新規講座の開設経緯と利用状況について、教育第二事業部の植野加一さんにお聞きしました。

ゲスト
TAC株式会社

教育第二事業部(税理士実務講座企画・開発担当) 植野 加一さん

インタビュアー
株式会社 オデッセイ コミュニケーションズ 横溝 萩乃

2019年の11月から、
「統計スキル」を身につける講座を新たにスタート

なぜ、御社で「統計」の講座をはじめることにしたのですか?

TACでは、年間20万人ほどの方々に講座をご利用いただいており、受講生層は18歳~60代と幅広く、ビジネスパーソンも多いです。統計に関する講座は弊社にはありませんでしたので、新規講座としてゼロから立ち上げ、2019年11月にスタートしました。その最大の理由は、弊社のユーザーにとって、基本的な「統計スキル」が、今後仕事を進めていくうえで必要になると考えたからです。

政府は、人工知能(AI)を使いこなす人材を年間25万人育てる目標を掲げていて、この先AIやビッグデータ、IoT等を核とする新しい技術が世の中で重要性を増すことが予想されるなか、その中核を担う「データサイエンティスト」の育成も急務だと謳っています。統計の講座をはじめるにあたり、いろいろと調べていくなかで、データサイエンスティストというのは“データを分析・活用する技術者”として、プログラミング力などの「①データエンジニアリング力」、数学力・統計力などの「②データサイエンス力」、そして「③ビジネス力」の3つのスキルを併せもつ人材だという情報(※1)に触れました。思えば、日本ではこれら 3 つのスキルをすべて兼ね備えた人材は希少であり、大半の企業ではそうしたマルチ人材は不足しています。そのうえ、人の育成は一朝一夕にはいかないため、結果として企業は、現状は①から③それぞれのスキルのある人材で補いながら、ビジネスと向きあうことになります。

出典:一般社団法人データサイエンティスト協会の プレスリリースより拡大してみる

そこで、すでにある程度の社会人経験に基づいてビジネスの現場で業務を遂行している方が、数学や統計の知識やリテラシーを身につければ、高度なスキルをもつデータサイエンティストにならなくても、データサイエンティストと協業して、スピード感をもってビジネスを推進したり、得意なビジネス力を活かしてチームで問題解決にあたることにも役立つだろうと考え、統計の講座準備を進めることにしました。

※1|
出典:「データサイエンティストのミッション、スキルセット、定義、スキルレベルを発表」|一般社団法人データサイエンティスト協会のプレスリリース

文系の資格でキャリア形成してきた社会人の
「大人の学び直し」として、統計スキルを選択

新設された統計の講座は、どのような方からの申込みが多いのですか?

今回新設した統計の講座は、大々的なPRなどは行わず、既存の当社ユーザーへの告知にとどめたこともあってか、現状は、受講生の数そのものはさほど多くはないのですが、利用者の内訳を見ると、年齢的には30代以上の方の割合が80%を超えています。また、過去の受講履歴別にみると、日商簿記、公認会計士や税理士、中小企業診断士などの会計/経営関係の受講者層が50%を占めています。その他にも、社会保険労務士や行政書士、司法書士などの労務経営関係、また、情報処理技術者や証券アナリスト、FPなどの金融関係、さらには、宅建士などの不動産関係の資格取得者のほか、公務員講座の過去受講生などの学生層にも統計の講座を受講いただいています。

従来、TACの受講生は文系の資格でキャリア形成を積みあげてきた方が多いのですが、そのような方々のなかには、デジタル化の進展に伴う世の中の変化に対して、いままでは苦手としていた、あるいは手つかずだった「数学的・統計的リテラシー」を身につける必要性を感じる方も増えてきていて、そうしたスキルをプラスしていくことで、さらなるビジネスチャンスをつかみたいという意識が高まりつつあるのだろうと推測しています。それと、今回は50代以上の方も若年層と同様の割合(20%弱)で受講いただいたのですが、このことからは「人生100年時代」を生きるための“大人の学び直し”という意識も反映されているように思います。

この、“大人の学び直し”という側面からすると、今後は、文部科学省が定めた2020年以降からの新しい「学習指導要領」のもと、データを分析して課題を解決するための統計教育をきちんと受けた学生層が年を追うごとに社会に出てきますので、既存のビジネスパーソンの統計知識のギャップを埋めるという意味でも、学び直しの題材として、「統計リテラシー」を選んでおくことは必要になってくると思います。

まずは、入門の入門を理解することから。
「統計検定」の対策講座、3コースを開設

実際の講座は、具体的にはどのような内容なのですか?

基本的には「統計検定」の資格対策講座として、現在はWebで学べる全3コースの通信講座を開設しています。カリキュラム内容を策定していくにあたっては、統計分野の専門家の方のアドバイスがとても参考になりました。というのも、私自身はこれまで約20年にわたって税理士講座(実務講座)の企画・運営を担当してきましたが、統計に対して個人的に不勉強な部分があったことは否めません。ただ、数十年前の「学習指導要領」では、さほど注力されていなかった統計分野に関しては、私を含む多くの人が「学習経験不足だ」と認識しているのでないかと思います。

そのような状況のもと、いろいろと調べていくなかで統計法(※2)の社会的意義について触れ、次いで「統計検定」という資格試験を知りました。講座開設にあたっては、この検定試験を主催している一般財団法人 統計質保証推進協会の方にご教示いただいた、「入門の入門から理解したうえで、より高いレベルに引き上げる」ことの重要性を改めて感じとり、その後、スタッフ総出で統計法を調べたうえで、“初心者の目線”を以て講座を設計することを基本にカリキュラムを作成していきました。

2019年の11月、まずは入門編として「統計調査士」の対策講座(全6回)を開設。続いて2020年の7月に「統計検定|3級/4級」の対策講座(全8回)、そして、その後のステップアップとして2020年の11月に「統計検定|2級」の対策講座(全11回)をスタートしました。

これらの講座は、これまで一度も統計を学んだことがない方でも、無理なく学習できる教材/カリキュラムにすることを留意して、「確率」などの必要最低限の数学の知識も学べる内容を取り入れ、統計の資格取得後の実務での活かし方を実感してもらうためにExcelを交えた内容を盛りこむなど工夫しています。とはいうものの、数学そのものに馴染みがなく不安を感じられる方のために、「確率」や数式の展開など、本来は小学校・中学校・高等学校で習得すべき内容が学べる「統計のための大人の数学」というオプション講座も新設しました。数学についての疑問点は、その都度解消していくほうが統計学習には効率的ですから。
現在、実施しているこれら3コースの受講期限は、いずれも今年の7月末までですが、当社のユーザーは、「会計士や税理士になるために資格をとる!」といった明確な目的意識のある方が多いですから、みなさん受講後はそれぞれ資格試験に挑戦すると思います。

※2|
「公的統計の作成及び提供に関し基本となる事項を定めることにより、公的統計の体系的かつ効率的な整備及びその有用性の確保を図り、国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与する(第1条)」ことを目的とした法律(出典:総務省のHPより)。

ビジネスに不可欠な素養として。
すべてのビジネスパーソンの標準スキルに

今後、統計スキルは、どのような位置づけになると思いますか?

今後、「数学的/統計的リテラシー」の重要性はますます増していき、職種や業務内容によらず、ビジネスをするうえで数学/統計の基礎知識は、すべてのビジネスパーソンにとって必須になると予想しています。

ひと昔前に比べ、ビジネスで扱う情報量やデータは圧倒的に増えています。そのなかから適切な情報を選び、仮説を立てて検証を繰り返し、的確な判断を行い、課題解決をしていくためには、基本的な「統計スキル」の習得が不可欠になります。情報やデータを扱う管理部門、マーケティング部門、営業部門をはじめ、プログラマーやSEなどの技術職などはもとより、経営企画部門やビジネスの意思決定を行う経営者や役員層にも必要になってくるでしょう。 直接データを扱う立場になくても、統計の基礎を体系的に学び、基本的な「数学的/統計的リテラシー」を身につけることで、データの背景を読み解く力や、課題を解決するための糸口を定性的な判断だけでなく定量的な情報を加味して的確に判断する能力が養われることを考えても、今後は簿記やパソコンスキル等と同様、すべてのビジネスパーソンに求められる標準スキルになってくると思います。

弊社の「統計検定」対策講座の受講生数は、開設して間もないこともあり、まだまだといった状況ではありますが、告知が行き届いていないなか、30%弱ほどは既存ユーザー以外の受講者の方にご利用いただいていることから、新規顧客層の開拓にも期待できると感じています。 現在は、「統計検定|2級」までの講座ラインナップですが、社内外の関係方面の方々のご支援を賜りながら、「統計検定|準1級」「統計検定|1級」の講座に加え、「高度な統計のための数学力アップ」講座など、多くのビジネスパーソンが新しい時代に活躍するための講座を開発/提供していきたいと考えています。

社会全体のデジタル変革(DX)が加速するなか、データサイエンティストといった専門職でないビジネスパーソンにとっても、データを活用できる統計リテラシーを備えておくことの必要性についてお聞きできました。
本日はお忙しいなか、貴重なお話しをありがとうございました。

(インタビュー:2021年1月)

ゲスト紹介
TAC株式会社 第二教育事業部(税理士実務講座企画・開発担当) 植野 加一さん
1986年にTAC株式会社に入社。入社当初より、国家資格である税理士試験の試験科目の所得税法・法人税法講師業務に従事。その後、税理士講座企画部、子会社の株式会社プロフェッションネットワーク(同社取締役就任)を経て、2017年に再び税理士講座企画部の実務講座部門に異動。一貫して、教育コンテンツ企画開発業務に携わり現在に至る。
ホームページ:TAC株式会社
参考:TACNEWS(仕事と資格マガジン)
特集|すべてのビジネスパーソンに 「統計」の知識を/
[ 取材協力:一般財団法人 統計質保証推進協会  統計検定センター ]
特集|「データサイエンティストに聞く、AI時代に必須なスキル」
[ 取材協力:「統計検定|2級」講師 / 門田 実(立教大学 社会情報教育センター 助教)]